残された時間で君は何を欲するのか
夕方,とある大学(ここです)の陸上部に呼ばれて講演(というか講義)を行った.
えらそうに(笑
内容はコンディショニングについて.
陸上競技によって身体にかかる負荷,それから立ち直るための栄養,睡眠.そして調整.
を中心に話してほしいという依頼ではあったが,最近はこうした内容を話す自分自身に大きな疑問を持っている.
そもそも,そういった各論はもっと専門的な知識をもった先生から学べば良いし,すばらしい参考書や情報だっていくらでも手に入れることができる.
さらに言えば,体育大とはそういったことを教える場所であるはずだから,授業を通してみな学んでいるはずだ.
いまさらMNBが教える必要は,本来ならばないんじゃないか?
とはいっても,陸上に特化したコンディショニングの方法や,自分の学校の先生ではない「MNB」が講義するからこそ,MNB教えるからこそ意味がある...というのも,まあわからんでもない.
でも,その程度の気持ちや考えで身につけた知識があったとしても,それでは本質を得ることはできないだろう.
あの選手がやってるから,あの先生に言われたから.
とっかかりはそれでも良いけど,それを自分のものにできるかどうかは別次元の問題.
確かに各論は必要.知識は極めて重要な武器になる.間違いをしないためのね.
MNBは知識というのは失敗しないための技術であり,結果に対してバクチ的要素をどれだけ減らすことができるかの武器であると思っている.
「ああすればこうなる」...ではなくて,「ああしなかったから,こうはならないだろう.」というように,できるだけマイナスの損失を少なくするのが知識.
MNBが尊敬しているひとは「陸上競技に対する科学は1%程度しか競技力向上には貢献していない」といっている.
でも,1%競技力が低下する可能性を減らすことができれば,十分知識は役に立っているじゃないか.
毎日1%を減らしていけば,1年もすればとんでもない差になるさ.
それが知識だ.
ちょっと脱線した.
こうした講義や講演で,一番最初につたえるのは「気持ち」だ.
一番最初に「君たちに足りないものは何だ?」と訊いた.
いろいろな意見がでた.
そして,再度訊く.「このなかで,グラウンドに落ちているものは?」
そう.ほとんどない.
つまり,君たちに足りないものの殆どはグラウンドで獲得できるものではなく,私生活や,君たちの生き方,ありかたに関するものだ.
「どうすれば手にはいるか」は非常に重要だが,そのまえに「何が本当に欲しいのか」を明らかにする必要がある.
それすら解らずに,「とにかく減量が必要」とか「室伏選手がやっているトレーニングをやってみたい」とか言ってしまうと,いわゆる無駄が生じ,強くなるためのバクチ的要素がどんどん大きくなってしまう.
今の大学三年生に残された時間はあと1年もない.
1年生だってあと3年もないんだよ.
たったそれだけしか残されていない時間に対して出来る事って,そんなに多くないだろう.
だったら,まずは自分にとって何が一番大切で,何を一番改善しなくてはいけなくて,何が一番欲しいのかを明らかにしなきゃ.
この手順を経て,ようやく「じゃあどうすればいい?」という議論に入ることができる.
まずは自分自身を見つめ直してほしい.
自分で壁を作っていないか? 残された時間を無視していないか?
まずはそこから.
そんな話をしてきました.