どのような「47秒台の選手」か
こうなりたいというビジョンを明確にすること.
「400mを47秒台で走りたい!」
ではなく,
「400mを47秒5で走りたい!」
だ.
そして,
「400mを前半から飛ばして,150m地点で最大スピード.第三コーナーからフロートで,第四コーナーから再加速.ラスト50mは根性.で走って47秒5で走りたい! 同じ47秒台の選手でも,前半だけは一番で通過したい!」
か?
レース展開まで明確にしてしまうと柔軟性が欠けてしまう...という思いがあるかもしれないが,それは違う.
いつ,どんな状況でも自分の100%を出すために.
どんな強豪が相手でも,可能な限りレースを自分で支配するために.
常に,より高いタイムを出すための可能性を残すために.
そのための前半型だ.
かつて武大の主将を務めていた前田剛(十種競技)は,十種競技の選手にもかかわらず,400mは常に「前半特攻」だった.
それは上記の理由からだ.
十種競技での400mというのは,1秒違っても40点程度しか変わらない.
ならば,バクチのように前半からぶっとばすのではなく,無難に走りきって「そこそこ」のタイムでゴールするほうが安全だ.
という考えは賢明かもしれない.
しかし,剛はそんなことは一切考えない.
頭のなかにあるのは「絶対に武大新記録を出す.大幅自己ベストを出す」ということしかない.
だから,400mでもなんでも前半特攻だ.
当たり前だ.
より大きな目標を達成するために,下位のニーズを犠牲にする.
剛の場合は将来,大幅な自己ベストを達成するために,もしくはより高い得点を獲得できるチャンスがあるならば常にそれに賭けるという精神のもと,「無難に走って,無事に入賞を確保する」という下位のニーズを犠牲にする.
その結果,彼は大幅な自己記録を達成し,武大新記録(とはいってもまだまだ低い得点だが)を達成した.
自分はどんな競技者でいたいか.どんな競技者になりたいかという欲求からビジョンは生まれる.
明確なビジョンは,これから自分は何をすべきかという道を示してくれる.
その道を進む勇気と根性があれば,一歩も二歩も目標へ近づける.
どんなレースを理想とするか.
どんな競技者になりたいか.
まずはビジョンを明確にしよう.