一貫指導をプロフェスする

一貫指導とは何か.

いろいろな考え方があるでしょうね.

今のMNBが考えているのは,目的が一貫しているということ.

オリンピックでも,日本一でも,関東一でも,プロでも,最終到達地点が整った状態で指導に向かうということ.



指導を受け始める年齢であろう小学校高学年や,中学生.そしてそこから大人,もしくは最終到達地点にまで関わる指導者はたくさんいるはずで,ただし,その選手に対して最終的な目的や目標は共有していること.

当然ながら,競技者は成長していくため,その次期毎に応じた指導方法が求められる.

こうした状況に応じて指導は変化しなければならない.



MNBは指導者は二つの軸で分類できると思っている.

一つ目の軸は「指示的行動」.競技者に対して指示・命令を下すという行動が多いか,少ないかである.
二つ目の軸は「援助的行動」.競技者に対して援助することが多いか,少ないかである.


そして,この二つの軸における行動が多いか少ないかで,概ね4つのパターンに分類できる.
つまり,

指示が多く,援助が少ない
指示が多くて,援助も多い
指示が少なく,援助が多い
指示が少なく,援助も少ない

の4つである.

リーダーシップについて勉強している方ならお気づきかもしれないが,実はこれはマサチューセッツ大学のケネス・ブランチャード教授が定義した「4つの基本的リーダーシップスタイル」という考えに基づいている.


そして,ブランチャード教授の言葉をかりると,上記の4つは

指示型 :指示が多く,援助が少ない
コーチ型:指示が多くて,援助も多い
援助型 :指示が少なく,援助が多い
委任型 :指示が少なく,援助も少ない

となる.




当然,それぞれメリット,デメリットがある.

例えば指示型はともすれば「専制的」「スパルタ」「強制」というイメージがわきやすいが,たとえば職場で火事がおきたときは指示型が最も都合が良い.つべこべいわず,とにかくついてこい! だ.

競技現場で置き換えれば,「右も左もわからない」状況である.

つまり,そのスポーツを始めたばかりの状況と類似している.


ここで注意しなければならないのが,指示が多いからといって決して縛り付けて,競技者のやる気や楽しみを奪ってはいけないということ.

これが難しい.まさにテクニックが必要である.

往々にして競技を始めたばかりの初心者は「やる気」だけは高い.

そのやる気をそぐこと無く,かつやり過ぎることもなく,将来の大きな目標にむかって「内的動機付け」を意識しながら指導するのが,一貫指導における最初の指導者が担う役割ではないかと考える.

キーワードは「目的の理解」「コントロール」「監督」である.




そして競技者は成長していく.すると,多くの場合競技力は高まるが,だんだんと熱意が薄れてくる.

その段階になると,次はコーチ型の指導スタイルの登場である.

指示はする.とにかくいろいろなものを決定する.しかしそれだけではなく,援助もしてあげる.

答えは指導者が示すが,それにたどり着くまでの援助も惜しまない.

これまでは,ほぼ一方通行であったコミュニケーションを,双方向にするのがコーチ型である.

最終的な決定は指導者が行うが,それを理解させ,納得もさせる.

この段階の指導者はカリスマ性よりも,むしろ共感性の高さが求められる.

その一方で,やさしさだけではなく,問答無用の厳しさも重要.

子供にテニスを教える松岡修三氏のようなイメージか.




さて,そこをクリアし,いよいよ専門的にその競技に取り組み,様々な面において成長を遂げた競技者に求められるのは何か.

それが援助型である.

これまでは指導者が有していた決定権を,今度は競技者が持つ.

指導者は,一つだけでは無い答えに対して競技者が選択し,進もうとするのを援助してあげる.

競技者の努力を助け,提案に耳を傾ける.外部に勉強にいきたければそれを推進してあげる.

自信をつけさせ,やる気を起こさせるために賞賛する.

あくまでMNB自身の考えではあるが,大学生における上級生,つまり成人し,競技者としての最終段階に向かおうとしている者に対して求められる指導スタイルである.

指導を受ける側の競技者も,大学ぐらいにはこのレベルに到達していることが必要.



そして,最終到達点を目前とした競技者に求められるのが委任型である.

この段階にくれば,多くの場合は指導者がかつて有していた競技力を越えているはずである.

ある指導者は「もう俺の手を離れたよ」と表現するかもしれない.

競技者としての体力はもちろん,技術,感覚,経験.こうしたものについて指導者を凌駕している競技者に対して,指導者ができることは何か.

それは環境を整えて見守ってあげること.ではないだろうか.

もちろん,競技者も一方向だけに成長するわけではない.時には援助が必要な状況も生じるだろう.

その時は再度「援助型のスタイル」で対応すれば良い.

そして最終的には一人の自律・自立した競技者として屹立する.

競技者としてのゴールを,人生の節目として設定できるようになり,次の新たなステージへと進む.

それはセカンドキャリアかもしれないし,さらなる高みかもしれない.




さて,だらだらと長くなってしまった.

じつは,この話は大学院での授業「スポーツ指導方法論特講」にて話している内容である.

MNBは准教授.教授の次の職位である.

英語では Associate Professor

Professとは公言すること,告白すること.

ある意味,正しいことを教えるというよりは,自身の考えを公言して,一緒に考えてもらうこと.

と,言い訳をしておく.