青は藍より出でて藍より青し

言葉はいらない.

いつしかそんな思いがよぎるようになりました.

けっして「言わなくてもわかってくれるだろう」という相手に甘えるような気持ちではなく,「言わない」ということで何かしらの意志を示し,相手に感じ取ってもらう.そんな関係になった教え子が勝浦を去りました.

敢えてブログに書くことは無いだろうと思っていましたが,やはり私自身のなかで区切りをつける必要があると思い,筆をとり,じゃなかったキーボードと向かい合っています.




選手を大切にするあまり,非情になりきれない.衝突したこともありましたね.

私に気を遣いすぎるあまり,私の心情を汲み取ろうとするあまり,自分の意見を押さえてしまうこともありました.

悩んでいる姿,苦しんでいる姿を絶対に人前では見せない.

それでも君は,私が教えてきたことを守り,模倣し,工夫し,いつしか私から仕事を頼める人間になりました.




指導とは,その本人がもつパーソナリティを最大限に発揮できるような能力を磨いてあげることです.

大学は手段であって目的ではない.指導者も一緒です.教えてもらうだけではなく,利用して成長してもらう.

それ自体は変化しないが,化学反応を誘発する触媒のようなもの.指導者と教え子とはそうした関係でもあります.

そのゴールは自らの力で門戸をとびだし,自律し,ひとりの人間として,仕事人として「立つ」こと.

ついにその時が来ましたね.




かつて,私が母校を去るときに恩師からは「お前は俺にとって空気のような存在だった」と声をかけてもらったことがあります.

僭越ながら,その時の恩師の気持ちが今ならばわかります.




今でも,研究室のドアをノックしてきそうな気がします.

早朝に競技場へ行けば,何食わぬ顔でストレッチしている気がします.

何か忘れ物をしたとき電話をすれば,すぐに対応してくれる気がします.

そんなことを思い出す度に,「気がするだけ」ということに気づかされます.

時間なんか過ぎなかったらいいのに.本気でそう思う時もありました.




指導者,教育者という仕事は難儀です.本来は喜ばしい,大変に嬉しいことのはずなのに,やっぱり両手で万歳はできませんね.

それでも前を向き,私達は私達の道を歩きましょう.




青は藍より出でて藍より青し




北の大地で大きく飛翔する姿が眼に浮かびます.

8年間,よく頑張りました.

ありがとう航太.