目標を設定する能力と妥協する能力
常に当たり馬券を手にするにはどうすれば良いか.
Ans.全ての馬券を買えばよい.
勝率100%を達成するにはどうすれば良いか.
Ans.絶対に勝てる相手とだけ勝負すればよい.
色々なことにチャレンジしたり,やろうと頑張ってみたり,やっぱりやめたり,挫折したり.
こうした経験を積むことで,人間は「自分の限界」を何となく感じ,「やる気のでる目標かどうか」を判断し,自分を叱咤激励する.
けれども,「やればできる」とか「目標の定め方」とか「自分の理想」とか「他人からみた自分」とか,いろいろなフィルターによって,本来自分で感じていた(感じようとしていた)「目標」や「限界」に対して不感になってしまうことがある.
つまりは不感症.
「先生.頑張らなきゃと思ってるんですけど,あるとき勝手に涙がでてしまうんです」という学生がいた.
大変に真面目で,一生懸命な気持ちをもった学生だ.
けれども,こうした学生ほど「理想とする自分にならなければいけない」という気持ちが強すぎて,精神が破綻しそうなことに気づいていない.
むしろフェードアウトしそうな自分に対して嫌悪感を抱き,さらに自分を追い込んでしまう.
結果,本当に精神が破綻してまう.
誰しも,エネルギッシュに前に進んでいる人にはあこがれを抱く.
スポコン漫画や,映画のヒーロー,ヒロインをみて,「よし! 俺も,私も頑張ろう!」と勇気づけられるのがその証拠.
冒頭に書いた言葉ではないが,目標を定めたり,理想を追求したりすることは大変に結構なことだ.
しかし,大きすぎる目標や,全てを捨ててもなお届かない理想の追求は,精神の崩壊というリスクを招く.
目標を設定する能力を磨くと同時に,自分の心を上手くだまし,妥協する能力も養うことが重要だ.
そして,スポーツはこの二つの能力を十分に養ってくれる.