2011年度 卒業生に贈る言葉

2011年度,国際武道大学陸上競技部を卒業・修了する君に送る言葉.


卒業,修了おめでとう.
君は今後,様々な「チャレンジ」に直面することがあると思います.
その時に重要なことを二つだけ話しておきます.


ひとつめは「準備」です.

これまで,一生懸命練習したり,勉強したりするのは「弱くなる可能性を少しでも減らす」作業であり,さらに言うなれば「勝負事をバクチにしないためだ」と伝えてきました.

たまたま勝てたという状況ではなく,勝つべくして勝ったという状況を作る作業が練習です.
そして,勝利と違って敗北には「たまたま」は存在しません.
矛盾しているかもしれませんが,負けるべくして負けるのが敗北です.

こうしたバクチ的要素を出来るだけ減らし,自身を勝利に導くのが「準備」です.
君がグラウンドで行ってきた練習というのは,勝利するための「準備」に他ならず,練習という心身を錬磨する作業を通して,勝負に勝つための準備について学んできたと思ってください.


そして,君が「これ以上ないほど練習してきた」といえるならば,それでも勝てない勝負の厳しさを教えてくれたのが陸上競技です.

君が「もっと練習しておけばよかった」と後悔するならば,後悔は先に立たない事を学べたはずです.


君たちが一生懸命グラウンドで流した汗は,これから強く生きていく上で本当に大切なことをたくさん教えてくれています.
そして,そこから何をくみ取り,学ぶかは,実はこれからです.
一生懸命やってきたときには気づくことのない友情や,勝負の厳しさ,努力の素晴らしさ.
これからの人生で再度確認してください.
そして学び直し,理想の自分に近づいていってください.



ふたつめは「未熟であることを恐れない」ことです.

英語では,勇気のある人を指して「あの人は悪魔さえ恐れない」といいます.勇気のある人は恐怖心がないのでしょうか? ちがいます.この言葉の本当の意味は「勇気ある人は恐怖心に支配されない」ということです.恐怖を抱き,それを利用し,迫り来る危険,危機に対して手段を講じ,準備できるということが,その本来の意味です.

そして,君が唯一恐怖を感じるべきは,失敗することに対してではなく,チャレンジしないでチャンスを逃すことに対してです.

お金,もの,目に見えるものを失うことを恐れてはいけない.本当に大切なものは目に見えないことが多い.それは信頼であり,友情であり,チャンスです.



いいかい.

君はまだまだ未熟だ.
心で思ったこと,誓ったことがあるにも関わらず,行動に移せないときもある.
自分自身でその未熟さを恥じ,悔やむこともあるだろう.

しかし,未熟であるがゆえの武器ももっている.
結果を恐れない心だ.
自分自身の心と常に会話し,自分がなしたいことに正直に,真っ直ぐに生きてほしい.


武大陸上部で培ったもの,得たものは何か.
君が進む道中において,人生の宝として気づかされることを願っている.


卒業,修了おめでとう.



国際武道大学陸上競技部監督 眞鍋芳明