間合い

相手の間合いに入る.

そこで反発してはいけない.

まずは自分を同調させる.

相手は「敵」ではないのだ.

その空間に自分を取り込んでもらえるかどうか.

極端な事を言えば,「好感」を持ってもらえるかどうかだ.



例えば,先生の研究室を訪ねる.

学生なら誰だって緊張するだろう.

むしろ,何の緊張感もなく恩師を訪ねるのは失礼というものだ.

しかし,いつまで経っても「壁」を感じていてはいけない.

緊張するのは良いが,恐縮し続けては,逆に「不快感」を与えてしまう.



相手の空間に入ったら,次のステップだ.

自分が何をしたいのか.どうしたいのか.

そして,相手は何を欲しがっているのか.どうしたがっているのか.

それを必死に探す.

手がかりとなるものはいくらでもある.

時間帯,相手の様子,仕草,その周りの状況・・・

総合的に判断し,「自分がいても邪魔ではない」という確信を持つことができれば,しっかりと自分の意見を伝える.



そうではない,つまり「時間的」「条件的」余裕がないと判断できれば,相手の欲しがっているものを最優先させる.

たとえば,「短く端的に話してくれれば,話は聞いてもらえる」という状況だ.



ということは,相手の空間で話をする場合は,やはり「準備」をしておくことが重要ということになる.

自分の伝えたいことを端的に伝える準備.

ダラダラと順を追って話をすることはだれでも出来る.

ただし,多くの場合,相手に全てを聞いてくれる余裕はない.




5年間続けて,全く知らない地域,地区へ学生募集活動に出向いてきた.

最初は,ただ高校の先生方に圧倒された.

「今は忙しい時だから,アンタの話なんかきいてらんないよ」

「ちょっと後にして」

「ずいぶん若いね.それじゃ力持ってないだろ」


おそらく,反発する雰囲気を出してしまっていたのだろう.



5年経った今.それなりに話を聞いていただけるようになった.

「おお.また来たか.まあ,茶でも飲んでいけよ」

「先生,この前な,〜〜があってよ,どう思うよ」



たった5年でも,大きく変わると考えるべきか.

それとも5年でここまで進めることができたと考えるべきか.

武道の達人は,どのようにして相手の間合いへ入るのか.

今度,稽古を見せてもらいたいものだ.