何事にもスジはあるのだ

研究室のドアの向こう,カバンを下ろす音.衣擦れの音.その後ノック.

毎日色々な学生が訪ねてくるので,これらの音と雰囲気で,大体どのような学生が来るのか,どのような要件なのか察しがつくようになった.

が,昨日は違った.


陸上部でもない,MNBの授業を受講したことも無い学生.

小学校でミニバスのコーチをしているのだが,ひょんなことから陸上大会へ向けて走幅跳のコーチもすることになったとのこと.

ノウハウがまったくないため,何とか教えてもらえないか? ということで,MNBの研究室を訪ねてきたのだ.

彼は「走幅跳を何とかして教えたい」という思いを「MNBの研究室に教えてもらいにいく」というカタチにしたのだ.

結果,ノウハウを取得できた.


行動を起こすことは難しい.

見知らぬ先生,しかも陸上部の監督.ビビル.コワイ.どうしよう.知り合いの学生に頼んでみるか.

様々な思いが頭によぎっただろう.

しかし,彼の勇気ある行動は成功した.



同じ日の夜.練習の合間にアイシングをしている陸上部の学生.

突然,陸上部でない学生が,彼らにマッサージとストレッチを始めた.

てっきり知り合いなのかと思って,しばらく横目でみていたが・・・だんだん行動がエスカレートしはじめ,選手もとまどっているため,声をかける.

十分な知識がない状態の学生トレーナーが,勝手に選手へコンディショニングを行う危険性を知っているためだ.

そこで判明した驚くべき事実.

マッサージをした学生と,されたウチの選手達は全く面識が無かった.

選手達は突然身体に触れられたため,ビックリして固まっていたようだ.

マッサージをしていた学生はおそらく善意で施してくれたのだろうが,学生を預かる身として,それをそのまま受け取るわけにはいかない.



思いをカタチにすることは大切だ.

だがしかし,そのやり方については,しっかりと考えてほしい.

どんな手順で,どんな手法を用いてカタチにするのか.

そのカタチは自分が望んだものなのだろうか.

行動を起こすことは重要.でも,その前に考えることはもっと重要.