落語風授業?

MNBは国際武道大学の教員です.
陸上部の監督でもあるけど,それ以上に「大学で講義をする」ということがメインでお金をもらっています.

つまり,「講義のプロ」「指導のプロ」でなければなりません.
自分の畑においてはスペシャリストでなければなりません.

大学では授業評価というのがあります.

国際武道大学と,非常勤講師をしている日本女子体育大学
どちらも学生からの評価を受けていますが,おかげ様でいずれも高い評価を頂いています.


もちろん,それは学生から見た画一的な評価であって,これが高いからといって「良い授業」というわけではありません.

学生は望まないけど,本当はものすごく重要なこと.
その指導には大変な退屈さがともなうため,学生からのウケは悪いが,内容はすばらしい.
そういった授業もあるでしょう.


教員とはサービス業です.


その対価としてお金をもらいます.


いかにして,学生に「楽しく」「わかりやすく」伝えるか.

伝えたいことは山ほどあります.
けれども,効果的な伝え方というのは実はそれほどありません.

90分の授業をフルに使って,言葉を羅列しても学生は覚えてくれないでしょう.


授業の前半はインパクト.とにかく「つかむ」.
どんな手を使ってでも,つかみにかかる.
一度,つかんでしまえば,その後に「わざ」が使えるからである.
逆に言うと,どんなにたくさん「わざ」を持っていても,つかめなければ使いようがないのだ.

つかんだら,こんどは「どのわざをしかけるか探る」.
やんちゃな男子学生のみであれば,示範でとりこにするのも良い.
「この先生,マジスゲー」「俺もあれならやってみたい」
まあ,つかみと似たようなものだけど,実技において技術指導をする際にやる気をださせるのには効果的.

じゃあ,やる気を出すのが恥ずかしいという学生相手には?
ちょっとおとなしめの女子学生10程度なら?
男女混合で50名以上の集団なら?

「効果的な伝え方がそれほど存在しない」というのは,こういうことです.
つまり,指導対象が持つ特性によって,それは異なってきます.

けれども,多くの対象に応用が可能なことがひとつあります.

それは「アツさ」
松岡修三氏の様なアツさ.
教育に対する情熱をぶつけること.

ただし,ここで注意が必要なのは相手との温度差.

相手と差がありすぎると,せっかくつかんだ相手も,あつすぎて離れてしまう.
MNBのようにひねくれた学生だと,そのアツさに疑問を抱いてしまう.
相手の体温を軽く上回る程度のアツさ,それが最良かと.

そして,有る程度のアツい口調に,「わざ」としての指導法をのせていく.
例えば,陸上の授業で走り方を指導するのに,最初は立ち方からスタート.
そして踏み出し方,歩き方.
なぜ,日本人は膝歩きなのか.何故黒人はヒップウォークなのか.
すり足とは? ナンバとは?
そうしたトピックスも交えて「みんなにしてほしい歩き方」,そのコツを紹介する.
これは決して姿勢の問題ではない.形の問題ではない.
ある部分を意識して,あるタイミングでグっと力を込める.
そういったコツを教える.

そして,ジョギング,ランニングへと繋げる.
立ち方,歩き方といったものは,いわゆる伏線.
走るのが好きではない,得意ではない学生に,イキナリ走り方を指導しても,そりゃあーた上手くいきませんよ.
高級料理やワインに表現されるような複雑な味は,素人には分かりません.
まずは,そのエッセンスを説明してあげる.それが重要.
それらを伏線として序盤に紛れさせておくこと.

お手本となるのは落語.

昨日,たまたまTVで浅草寄席を見ました.
噺家による質の高い落語というのは本当に面白い.
流れるように出てくる言葉には,すべて意味があり,つながりがある.
全体に起承転結があり,細かく分けた話の中にもリズムと展開がある.
それをマネするために見るというよりは,そういう持って行き方があるのかと,関心するために聞く.

オチあり,笑いあり,教養あり.
高いレベルの指導をしたければ,落語をみるとよいやね.