「考察」とは

ただいま,修士は論文作成の山場を迎えております.

審査は1/31
正式な提出は1/18
そのため,指導教官への仮提出は1/12程度

まさに,今文章追い込みの真っ最中
多くの院生は「おぼろげながら」形が見えてきて,さらに良いものを創ろうと考察の真っ最中でしょう.


さて,論文における考察とは.

様々な考えや意見があろうかと思いますが,仮にも博士号を取得しているMNBが,自身の研究室で提案しているのが第一考察と第二考察,そして現場への示唆という考え方.


例えば,車でのコーナリング. 


晴れの日よりも,雨の日の方が滑りやすい.



これは「事実」,つまり「結果」である.

そして,その結果が示すところの意味,原因,なぜ というものを考える.

これが「第一考察」である.


雨が降ると,地面とタイヤ間における摩擦係数が低下する.
だから,滑る.


これは結果から純粋に導きだされたもの.

だれもが納得できる事実であり,考察の核になる部分でもある.


しかし,これだけで終了しては論文/レポートとは呼べまい.


では,次はどのように進めるか.


なぜ,雨が降ると摩擦係数が減少するのか.


雨により地面にあった埃やゴミが浮き上がってしまう.
それらの浮遊物がタイヤと路面との間に入り込み,滑りやすくしてしまう.
と,いうことは,一番ゴミや埃が浮き上がりやすい「雨の降り始め」が一番滑るのではないか.
もっと雨が降ると,ゴミや埃まで流してしまい,純粋に水により摩擦係数低下のみが引き起こされる.これだと,降り始めに比べると,まだマシである.


これが「第二考察」である.


結果から導きだされた「第一考察」をもとに,より具体的な論を導きだす.


そして,それを現場にどう応用するか.これが「現場への示唆」


運転する時には,雨の降り始めが一番滑るから注意しましょう.

だけでは,ちょっとさびしい.

ここでは,もう少し妄想を膨らましてもよい.

タイヤに付着したゴミや埃を強制的に排除するために,ブレーキ部分から水流を発生させ,常にタイヤがぬれっぱなしになるようにしよう!

とか,

ボンネットの先端から,車の進行方向へ向けて強烈なジェット水流を発射し,ゴミや埃を事前に洗い流してしまおう!

とか.


ちょっと飛躍しすぎたかな.

でも,応用科学ではそれくらいの突飛な発想があっても良いのではないかと思う.それこそが,夢のある研究というものだ.


こうして「第一考察」「第二考察」「現場への示唆」とつなげるわけだが,大事なのが理論武装である.

ろくに勉強せず,ただ自分の夢物語を広げるだけでは論文とはいえまい.

摩擦係数とは何か?

なぜ,水によりゴミと埃が浮き上がるのか?

路面―タイヤ間の摩擦係数低下度は,本当に 埃>水 なのか?

こういった第二考察で核となる部分の根拠を,先攻研究や専門書などから導きだしておくのだ.場合によっては,それを証明するための実験を行うのもアリだ.


こうして出来上がった考察は,理論的根拠を持ち,かつよく考えられているために他人を引きつけ,夢があるから高い評価を獲得できる.


修論生諸君.頑張って考察せよ.