疲労と合宿の成功

入学予定者合宿,NZ遠征,武大選抜合宿に混成合宿と,長らく合宿に出ていて感じること.

それは疲労の作り方と抜き方,感じ方.



合宿開始初日などは合宿にきたという高揚感から,選手達は疲労を感じることなく練習と私生活をスタートする.

この流れはおそらく二日目も続くだろう.

問題なのは慣れが生じる三日目.

ここで上手く疲労をコントロールする必要がある.

多くの場合,合宿二日目は二部練習,つまり午前と午後の両方を練習にあてる.合宿だという高揚感や,特別な練習であるという認識から質は高くなる.

当然,三日目にしわ寄せが来る.



その三日目をどうコントロールするか.指導者の腕の見せ所だろう.

ある合宿では全体合同でのスタートダッシュのようにハイレベルで競わせることで,低下しがちなモチベーションを強制的に高め,さらに疲労を作り出す.

ある合宿では,練習を極端に落とし,温泉などを利用し,むしろ疲労回復に切り替えることで次の練習に備えさせる.

もちろん個人差はある.さまざまな理由により全力を出し切れないような選手は三日目もそれなりに動ける.けれども,それはコチラが狙った内容ではないため,その旨を選手にはしっかりと理解させる必要がある.逆にすでに疲労を抱えた状態で合宿に参加せざるを得ない選手など,疲労は常にそこにあるものと感じている場合は,二日目の段階で質・量ともにコントロールしなければならない.

当然,その後の練習も大きく変化する.

中1日で抜けない疲労をどうやってさばくか.

つまり四日目の休養日の次,五日目の練習内容をどうするか,どうできるかが選手としての質が問われるということになる.

疲労があるなか,一瞬でよいから輝きを見せ,質を確保できるかどうか.

逆に疲労感があるからこそ,あえて質を落として量を稼ぎ,代謝的な負荷をかけつつ,六日目の練習にむけて心身を回復させられるかどうか.

種目によっても,選手個人の状況によっても異なる,こうした練習の流れをどうやって組み立てるかで,合宿が成功するか失敗に終わるかが決まる.

特に最近,MNBが気をつけているのは「疲労させすぎない」ということ.

この時期の合宿は「シーズンへ向けて調子を上げる」のが目的なのだから,疲労した状態で心身を追い込むのはNGではないかと考えている.

むしろ,疲労していない状態をできるだけ作りだし,一発の練習で一気に疲労させるような練習のほうがのぞましい.

ただ,それには選手のモチベーションが必要不可欠であることはいうまでもない.




病は気からという言葉があるが,現場の指導者は,選手達のモチベーションと疲労との関係を常に監視,コントロールする必要がある.特に合宿という特別な期間では,選手達と接する時間が長いため,コントロールが容易となる.

選手にぜひ考えてほしいのは,我々指導者は常に選手の状況に応じて練習計画を立てているということ.

それを理解して,我々が立てる練習計画と同様の練習計画を構築する.のが理想かもしれないが,多くの場合それは不可能に近い.

なぜなら,選手自身は本当に疲労しているため,今の状態で自分に必要な練習を過小評価することが多いからだ.

疲労して動けない,動きにくいと感じている時,特に今日の練習を確認するウォーミングアップ前の段階では,想像以上に厳しい練習に対してネガティブになる.しかし,それは選手自身が自分の殻に閉じこもっているだけであって,指導者は見事にそれを見抜いて必要な練習を計画しているのだ.

だから,選手にとっては「え〜マジっすか!?」となる.まあ,強くなるためだ.



そして,疲労について考えなければならないこと.

練習をすれば常に疲労すると考えられているが,その実,人間の身体は常に回復も行っているということ.

疲れ具合ばかり気にしている者が多いが,回復具合も常にチェックしてほしい.

疲労感というより回復感,皮膚の状態から視力,意識の集中性や起床時体温.チェックの方法はいくらでもある.身体感覚は一番大切だけど,疲労感があるのに調子が良いということもあるから,感覚以外にもチェックできる方法を身につけておくことも重要.

そうすることで,休養日明けの練習内容を予測し,その練習に大きな意味を持たせることができる.

選手は練習によって疲労する意味と同じくらい,回復させるために何が必要かと考えなければならない.



さて,合宿が無事終了.MNBは成功だと思っている.

いよいよシーズンも近づいてきた.

爆発するまでもう少し.

牙を磨こう.