新社会人へ捧げる言葉

震災の影響により,大学で卒業の瞬間を迎えることができなかった卒業生から電話やメールが来る.


2010年度卒業生へ贈る言葉は,3月17日の日記に書いた.


それに加えて,新社会人を迎える卒業生に「毎年言っていること」を書いておこうと思う.



眞鍋の口癖のひとつに「人間は慣れの生き物だ」がある.

人間は,肉体的にも精神的にも,状況に順応する能力が高い.

どんなに苦しくても,どんなに惨めに感じても,そしてどんなに不安でも,それに慣れる.

そして慣れなければ次の段階に進むことはできない.



社会人になって研修や仕事が始まれば,学生生活を懐かしむ暇もないほど忙しくなるだろう.

それと同時に,自分の将来に対して非常に不安に,そして挫折してしまう時もあるだろう.

震災を見てもわかる通り,先に対する不安は誰でも持っている.そして,世の中であるレベルの仕事を行う,任される人というのは,自分の不安と付き添いながら,その不安を越える努力をしている.不安を消すことはできない.消化するしかない.


人生において目標を持つことは大事だが,世の中は一直線には行かない.かならず紆余曲折がある.後退もするが,忍耐強くやれば必ず前に進むと信じてほしい.

出生したいとか,カネを設けたいとかいうのは目標というよりもむしろ願望である.

一生懸命やらねば出世しないのは当然かもしれないが,一生懸命やったからといって出世するものでもない.


諸君が大学時代に熱中した陸上競技のように,極めて客観的かつ合理的なものとは実社会は異なる.人間的な評価の部分,人との巡り合わせ,更にはその会社を取り巻く環境の変化など,個人ではどうしようもない運の要素がかなりな部分を占めることも少なくない.能力に個人差があるのは当然であり,いかに自分を磨くか,その気持ちを持続できるかが重要だ.


陸上競技のように目標を現実的なものとして設定する必要はあるだろうが,自分に課すべきは抽象的な目標である必要もある.

日本を豊かにする.日本を元気にする.

おおいに結構.そうした抽象的な目標を常に掲げよ.



そして,まず目の前の状況に,自分が置かれている状況に慣れるように努めよ.

まず1週間,そして1ヶ月,さらに1年.



3年もするころには,この日記に書かれている意味が良く理解できるだろう.

そして,そのころには過去の失敗などハナで笑い飛ばせるような大きな人間へと成長しているはずだ.




さあ,いよいよ明日から新年度がスタートする.

前を向け.

元気を出せ.

自分を奮い立たせ,日本を元気にしよう!