相手の前提条件を理解した上で意図的に期待に応える能力

国際色豊かな選手村にいると,様々な「前提条件の違い」に直面する.

並ぶことが当たり前と思っている人たちと,並ばないことが当たり前の人たち.

他の国が持ってきたシートや椅子やベッドなども,勝手に借りられるのが当たり前という考え.何があっても絶対に貸さないという意志表示をする人.

大勢があつまっている中で,大音量で音楽を鳴らしても「楽しいからいいじゃん」と「ちょっと静かにしてよ」

控え場所であるテント(直線的に80mほどテントが並んでいる)のなかで,荷物をよけながらダッシュや動き作りを始める選手.そんなことも意に介さず濡れている地面に平気で寝転がるコーチ.

少ないルールの上に,様々なマナー.

そしてそれを支える価値観や前提条件.



こうした様々な違いを,どのように捉えて,どのように対処するのか.
それがコミュニケーション能力.

コミュニケーション能力とは「相手の前提条件を理解した上で,意図的に期待に応える能力」であると思っている.

(状況)大勢のコーチ&に対して少ない椅子
(前提条件)選手が優先的に使えるようにしよう
(期待)使いたいならば一声かけて欲しい
(行動)知らない国のコーチがつかっているけど,選手は使っていないみたいなので,一声掛けて借りよう.
(結果)選手から声を掛けられたら,流石に貸さざるを得ないなぁ.仕方ない.



ところが,前提条件が異なるとどうなるか.

(状況)大勢のコーチ&に対して少ない椅子
(前提条件)とにかく早い者勝ち.選手だろうが譲るつもりはない.
(期待)使いたいならば,こっちに旨味のある条件を提示しろ.
(行動)あの人たちはお願いしても使わせてくれそうにない.でも,ピンバッジか何かを渡せば,貸してくれそうだ.試してみよう.
(結果)タダで貸すつもりは無かったが,たかだか椅子を貸すだけでピンバッジをくれた.これはおいしい.是非もう一つの椅子も使ってくれ.


相手の期待に応えつつ,こちらの要望も満たすことができれば,ストレスなく生活ができる.その妥協点をみつけ,納得する努力をしよう.